環境会計知識の効果的活用
                                                     
                                                      Biz総研(株)
                                                      代表取締役  加藤 征彦

環境会計知識を、環境マネジメントシステムに効果的に活用するためには環境会計の基礎と応用を理解する必要がある。
 
ISO 14001 マネジメントシステム構築する際、システムを効果的に活用するためには、環境保全のコスト(=費用)とその効果を比較して、
いわゆる「費用対効果」を熟慮検討して、環境目的・目標を絞り込んで設定することが重要である。


1.環境会計とは

環境会計とは何であるか、その定義を分かり易く表現すると、事業活動のうち、環境面に関する経営資源の 投入分を@環境コストとして、
その効果を貨幣評価又は物量データとして、A環境成果を示すことにより、 両者@とAを比較検討できる経営情報を提供することを意味している。

従って環境会計を活用するためには、環境コストと環境成果(=効果)を定量的に現すことが必要である。
又、当然の事ながらコストと効果の算出にあたり、原価計算手法及び管理会計の基礎知識が必須であることも理解できる。

環境側面に関する事業活動は、公共全体の国レベルの事業活動もあり個別の企業活動もある。
公共全体の事業活動は国民経済計算システムに組み込まれ、マクロ環境会計の分野と称して「環境・経済統合会計」と
「資源・環境会計」に区分できる。個別の企業活動としては、内部の経営問題を取り扱う「内部環境会計」と、外部に環境データを
公開する「外部環境会計」に区分され、ミクロ環境会計の分野と称される。

分類区分を表示すると

 

  
2.費用対効果の考慮

費用対効果は、事業活動がどんな形態であれ考慮しなければならない課題である。
とりわけ営利企業の場合、経営成果が問われるので、効果の現れる時期との兼ね合いで費用の見積算定をしなければならない。

 2−1)環境保全費用の算定

 環境保全費用として、主な事項を列挙すると以下の項目がある。
 
  @ 公害防止費用 :大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、悪臭、作業環境等の環境保全

  A 省エネルギー、省資源、リサイクル費用

  B 廃棄物処理費用

  C 環境啓発教育・訓練、コンプライアンス教育

  D 構内緑化、自然保護、寄付行為

  E 環境向上のための研究開発

又、環境関連法規違反に対する損害賠償金の支払い等も環境損失費用として、環境費用として見なすことができる。
環境保全費用を実務的に確定するには、原価計算の手法が必要で、特に配賦計算が重要となる。

 2−2)効果の算定

環境保全費用を使って環境に良い影響を与える効果は、その測定(評価)方法として、有害物質の排出量削減と貨幣価値に
換算する経済的な財務情報の算定に区分できる。

有害物質の排出量削減は、記録データを正確に保存維持することにより確定できるが、問題は効果を貨幣価値の
算定に結びつける場合に生ずる。

環境会計では、いまだ貨幣価値に換算する共通の統一方式は確立しておらず、効果の算定は仮定条件を伴う。
効果には、種々の要因が寄与しており要因を個別に分離し解釈するためには、ある仮定を設定せざるを得ない。

各種原価計算の手法及び管理会計の考えは、効果の算定の場合にも、有効に機能し役に立つ。

環境経済的な効果を算定する仮想評価方法(CVM ,Contingent Valuation Method)もアンケート方式により
環境の価値を貨幣金額に換算する評価方式であるが仮定条件を伴っている。


3.優位性ある環境マネジメントシステムの構築

個別私的企業の場合、優位性ある環境マネジメントシステムを構築することに関して筆者の考えを提言する。
筆者は、実務経営に携わっている傍ら、現役の審査員としてISO第三者審査を行っている体験から気づき事項を述べる。

ISO 14001:2004 の付属書(Annex)A3.3には、環境目的・目標を設定する際に環境原価計算手法の使用を 義務づけるものではないと
記述されているが、環境会計を環境マネジメントシステム構築に取り入れることは、 システムを経営業績に貢献させるために
必須事項になると思われるが、残念ながらその事例は少ない

組織体の環境側面を系統的に抽出して評価する事と、実行可能な業績に貢献する環境目的・目標を設定することはシステム
構築上非常に重要なことである。

費用対効果を考えて、抽出された環境側面に対して系統的に優先順位をつけて、環境目的・目標を絞りこむ事は
環境パフォーマンスを向上させるためにも必要なことである。

但し 注意しなければならない盲点として、経営者の方針、組織の構成要員の力量レベル、実行可能性等を配慮しないと、
使いものにならないシステム文書のみが、できあがってしまい経営に貢献しないことである。

このような環境マネジメントシステムを構築してしまった後で、経営に役立たないと後悔する事例が多いことは残念な事である。

組織体の身の丈にピッタリとあったシステムを構築して、経営業績に貢献するものを作り出すことが重要である。

環境会計知識を活用すれば効果のあがる手法なので、その活用を提言したい。


4.結  言

  1)環境会計を分類すると、国民経済を対象とするマクロ環境会計と個別の企業活動を対象とするミクロ環境会計に大別できる。

  2)環境会計において、「費用対効果」を考慮することは非常に重要なことであるが、効果を貨幣価値に換算する共通の統一方式は
     いまだ確立しておらず、その算定には仮定条件が伴う。

  3)個別私的企業が環境マネジメントを構築する場合、経営業績を向上させるためにも「費用対効果」の考えを取り入れることは
     非常に重要なことであり、その際環境会計知識は有効に役立つので、その活用を提言する。


5.参考文献

  1) ISO 14001:2004 環境マネジメントシステム−要求事項及び利用の手引き 日本規格協会 (2004年)

  2) 河野 正男 著  「環境会計」     中央経済社     (2001年)

  3) 宮崎 修行 著  「統合的環境会計論」 創成社        (2001年)
 
  4) 國部 克彦 監修 「環境会計最前線」 省エネルギーセンター (2003年)

  5) 栗山 浩一 著  「環境評価と環境会計」日本評論社     (2000年)